営業利益・事業利益・経常利益・付加価値の違いを徹底解説!

企業の経営状況を分析する際に、「利益」という言葉は頻繁に登場します。しかし、利益には「営業利益」「事業利益」「経常利益」「付加価値」など、複数の種類があり、それぞれ意味や計算方法が異なります。この違いを理解しないと、企業の実力や経営の健全性を正しく評価することはできません。

本記事では、これらの利益指標の意味や計算方法、そして何がわかるのかを、できるだけわかりやすく、具体的な事例を交えて解説します。最後まで読めば、財務諸表や決算書を読む力が確実にレベルアップします!


1️⃣ 「営業利益」とは?

営業利益(Operating Income) は、企業の本業のもうけを示す指標です。つまり、企業が本業でどれだけ稼げているかを示しています。

🔸 営業利益の計算式

営業利益=売上高−売上原価−販売費及び一般管理費(販管費)

販管費 には、広告費や人件費、家賃、オフィスの光熱費など、企業の経営活動に必要なコストが含まれます。

🔸 営業利益でわかること

  • 本業の稼ぐ力(コアビジネスの収益性)

  • 売上に対する利益の割合(営業利益率) → 営業利益 ÷ 売上高

例えば、A社が売上100億円で営業利益5億円なら、営業利益率は5%です。これに対してB社が売上50億円で営業利益5億円なら、営業利益率は10%。B社のほうが効率的に稼いでいると言えます。


2️⃣ 「事業利益」とは?

事業利益(Ordinary Profit from Operations) は、日本特有の概念で、特に製造業や大企業の分析で使われることが多い指標です。定義はやや曖昧で、企業やアナリストによって解釈が異なる場合がありますが、一般的には次のように理解されています。

🔸 事業利益の考え方

事業利益=営業利益+受取利息・受取配当金−支払利息

つまり、本業のもうけに、営業活動に関連する金融収益(受取利息・受取配当金)を加え、金融コスト(支払利息)を引いたものです。

🔸 事業利益の特徴

  • 金融取引の影響を反映する(ただし営業外損益の中でも、本業に近いものだけを考慮)

  • 資金調達コストや財務戦略の影響を含めた利益

例えば、設備投資が多い製造業では、借入金が増えると支払利息も増加します。このような金融コストまで含めて事業全体のもうけを見たいときに「事業利益」を使うことがあります。


3️⃣ 「経常利益」とは?

経常利益(Ordinary Income) は、企業の通常の活動によって稼ぎ出される利益を示す指標です。日本の会計基準で特に重視される利益のひとつです。

🔸 経常利益の計算式

経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用

営業外収益には、受取利息や受取配当金、有価証券売却益などが含まれます。営業外費用には、支払利息、為替差損、有価証券評価損などが含まれます。

🔸 経常利益でわかること

  • 本業だけでなく、金融活動(投資や資金調達)を含めた企業全体の収益力

  • 企業の総合力を示す指標(本業+財務活動)

例えば、製造業A社が本業でしっかり利益を出していても、巨額の借入金に伴う利息負担で経常利益が低下している場合、「資金調達のバランスが悪い」という経営課題が見えてきます。


4️⃣ 「付加価値」とは?

付加価値(Value Added) は、企業が新たに生み出した価値を示す指標で、国際的な視点ではGDPや経済成長の測定にも使われます。企業会計では次のように定義されます。

🔸 付加価値の計算方法

代表的な計算式(労働分配率算出のための付加価値額)は次の通りです。

付加価値=営業利益+人件費+支払利息+租税公課+減価償却費

企業が稼いだ利益だけでなく、従業員への給与(人件費)、国への税金、資金提供者への利息、資産の消耗分(減価償却)まで含めて「誰にどれだけ価値を分配したか」を示します。

🔸 付加価値の意義

  • 企業が社会にどれだけ貢献しているか(経済的な貢献度)

  • 給与や税金として「価値」を社会に還元しているかの指標

  • 中小企業診断士試験や経営分析でよく使われる

例えば、付加価値が高い企業は「人件費をしっかり払える」「利益を出せている」「税金を納めている」といった社会的責任も果たしている企業といえます。


5️⃣ まとめ表で違いを整理!

指標 意味・特徴 主な計算式 何がわかる?
営業利益 本業のもうけ 売上高 – 売上原価 – 販管費 本業の稼ぐ力、利益率の比較に使う
事業利益 本業+金融収益(営業寄り) 営業利益 + 受取利息・配当金 – 支払利息 本業+財務戦略を含めたもうけ
経常利益 本業+金融活動を含む総合利益 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 企業の総合力(本業+資金調達力)
付加価値 企業が生み出した新たな価値 営業利益 + 人件費 + 減価償却 + 租税公課 + 利息 社会への貢献度(人件費、税金などの支払い含む)

6️⃣ 実務での使い分けは?

  • 営業利益を見るべきとき → 本業の収益力を分析するとき(売上高営業利益率の比較など)

  • 事業利益を見るべきとき → 製造業などで資金調達コストを含めた全体の稼ぐ力を知りたいとき

  • 経常利益を見るべきとき → 企業全体の安定性・財務活動の健全性をチェックするとき

  • 付加価値を見るべきとき → 社会への還元力や、労働分配率の計算をしたいとき

企業の決算書には、「営業利益」「事業利益」「経常利益」「付加価値」など、似たようで意味が異なる利益指標が登場します。これらは一見すると難しく感じますが、具体的な数字で理解するとスッと頭に入ります。


🌱 1. 例題企業のデータ

まず、以下の架空企業「ABC社」の年間データを用意します。

項目 金額(百万円)
売上高 10,000
売上原価 6,000
販売費及び一般管理費(販管費) 2,000
受取利息 50
受取配当金 30
支払利息 80
為替差損 20
有価証券評価損 10
人件費 1,200
減価償却費 300
租税公課 100

このデータを使って、各利益を計算していきます。


1️⃣ 営業利益の計算と解釈

計算式

営業利益 = 売上高−売上原価−販管費

営業利益 = 10,000−6,000−2,000=2,000百万円

解釈

営業利益は本業のもうけです。ABC社は売上10,000百万円のうち、2,000百万円を本業で稼いでいます。営業利益率は20%(= 2,000 ÷ 10,000 × 100)、つまり売上のうち2割が利益として残る健全なビジネスモデルです。


2️⃣ 事業利益の計算と解釈

計算式

事業利益 = 営業利益+受取利息+受取配当金−支払利息

事業利益 =

解釈

ABC社は受取利息(50)と受取配当金(30)で80百万円の収益を得ていますが、支払利息も80百万円あり、金融面での損益はプラスマイナスゼロ。そのため、営業利益と事業利益は同じ2,000百万円になります。

ここから見えるのは、ABC社は金融活動の影響がほとんどなく、資金調達の負担が重くない、あるいは投資収益がそれをカバーできている状態です。


3️⃣ 経常利益の計算と解釈

計算式

経常利益=営業利益+営業外収益−営業外費用

営業外収益 = 受取利息 + 受取配当金 = 50 + 30 = 80
営業外費用 = 支払利息 + 為替差損 + 有価証券評価損 = 80 + 20 + 10 = 110

経常利益=2,000+80−110=1,970百万円

解釈

ABC社は本業ではしっかり稼げていますが、為替差損や有価証券評価損(合わせて30百万円)で利益が削られています。経常利益が営業利益より少ないのは、金融活動での損失が影響しているためです。つまり、経常利益は「企業全体の総合力」を示し、金融リスクや投資判断の良し悪しまで含めた成績表といえます。


4️⃣ 付加価値の計算と解釈

計算式

付加価値 = 営業利益+人件費+減価償却費+租税公課+支払利息

付加価値

解釈

付加価値は、企業が社会に生み出した新たな価値の合計です。ABC社は、従業員への給与(1,200百万円)、国への税金(100百万円)、資産の消耗分(減価償却費300百万円)、資金提供者への利息(80百万円)を含めて、合計3,680百万円の価値を創出しました。

この数字は、企業が「誰にどれだけの価値を分配しているか」を示すものです。たとえば、労働分配率(人件費 ÷ 付加価値)は32.6%(=1,200÷3,680×100)で、付加価値の約1/3が従業員に還元されていることがわかります。


5️⃣ まとめ表(数値比較)

項目 金額(百万円) 解釈
営業利益 2,000 本業のもうけ
事業利益 2,000 本業+金融収益のもうけ
経常利益 1,970 本業+金融収益+金融損失を含む総合力
付加価値 3,680 社会に分配された新たな価値の合計

6️⃣ 利益指標の「顔つき」をどう読み取るか?

これらの利益指標は、数字を眺めるだけでは意味がつかめません。大切なのは、**「何が原因で増減しているのか?」**を読み取ることです。

例えば:

  • 営業利益 → 本業がうまくいっているか?(商品力、コスト構造、効率性)

  • 事業利益 → 金融活動(資金調達、投資)の影響は?

  • 経常利益 → 投資や為替リスクを含めた総合的な実力は?

  • 付加価値 → 企業がどれだけ社会に貢献しているか?(人件費や税金の支払い含む)

特に、経常利益が減っているなら「金融面でのリスクが潜んでいないか?」、付加価値が小さいなら「人件費や投資が足りていないのでは?」といった深掘りが必要です。


7️⃣ 実務での使い分けのポイント

利益指標 注目シーン
営業利益 本業の儲けを知りたいとき。特に同業他社との比較で重要。
事業利益 製造業などで資金調達や投資の影響を含めた収益力を評価するとき。
経常利益 企業全体の健全性や、金融リスクの影響を見たいとき。
付加価値 社会的貢献度(人件費や税金の支払い含む)を評価するとき。労働分配率の分析などにも使う。

8️⃣ まとめ

営業利益、事業利益、経常利益、付加価値――似ているようで、実はそれぞれ見る角度が違う指標です。数字の背景には、企業の戦略、投資、コスト構造、社会的責任が反映されています。

「どの利益を見るべきか?」は、分析の目的によって異なります。

  • 「稼ぐ力」を知りたいなら営業利益

  • 「金融戦略まで含めた力」を知りたいなら事業利益・経常利益

  • 「社会的貢献度」を見たいなら付加価値

数字を読むときは、表面の金額だけでなく、**「なぜこの利益になったのか?」**を常に考える習慣をつけましょう。それが、ビジネスパーソンとしての分析力の第一歩です。


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