日本の証券アナリスト試験 1 次試験(財務分析)におけるレバレッジの詳細解説

証券アナリスト試験の財務分析分野では、レバレッジ(Leverage)が企業の財務戦略を分析するうえで重要な概念として登場します。

  1. 営業レバレッジ(Operating Leverage)
  2. 財務レバレッジ(Financial Leverage)
  3. 総合レバレッジ(Combined Leverage)

それぞれのレバレッジの意味、計算方法、分析のポイントを詳しく説明します。


1. 営業レバレッジ(Operating Leverage)

概要

営業レバレッジとは、売上の変動が営業利益(EBIT: Earnings Before Interest and Taxes)に与える影響を測定する指標です。企業のコスト構造(固定費と変動費の比率)によって決まり、固定費が大きい企業ほど営業レバレッジが高くなります

営業レバレッジの計算式

営業レバレッジは 営業レバレッジ係数(Degree of Operating Leverage: DOL) によって定量化されます。

DOL=%営業利益の変化率%売上高の変化率DOL = \frac{\% \text{営業利益の変化率}}{\% \text{売上高の変化率}}

また、以下の式でも計算可能です。

DOL=限界利益(売上高-変動費)営業利益(EBIT)DOL = \frac{\text{限界利益(売上高-変動費)}}{\text{営業利益(EBIT)}}

解釈

  • DOLが大きい(>1)場合

    • 売上が増加すると営業利益の増加率が高くなる(固定費負担が大きいため)。
    • 逆に売上が減少すると営業利益が大きく減少するリスクもある。
  • DOLが小さい(≒1)場合

    • 固定費が少なく、売上の変動が利益に与える影響が小さい。

例題 売上高 1,000万円、変動費 500万円、固定費 300万円 の企業がある場合、

営業利益=1,000−500−300=200万円\text{営業利益} = 1,000 – 500 – 300 = 200 \text{万円} DOL=1,000−500200=2.5DOL = \frac{1,000 – 500}{200} = 2.5

この場合、売上が10%増加すると、営業利益は 10% × 2.5 = 25% 増加する。


2. 財務レバレッジ(Financial Leverage)

概要

財務レバレッジとは、負債の活用が株主利益(EPS: Earnings Per Share)に与える影響を測定する指標です。企業が負債を活用すると、金利費用が発生しますが、それによって利益の変動幅が拡大する効果があります。

財務レバレッジの計算式

財務レバレッジは 財務レバレッジ係数(Degree of Financial Leverage: DFL) によって定量化されます。

DFL=%EPSの変化率%営業利益(EBIT)の変化率DFL = \frac{\% \text{EPSの変化率}}{\% \text{営業利益(EBIT)の変化率}}

また、以下の式でも表せます。

DFL=営業利益(EBIT)税引前利益(EBT: Earnings Before Taxes)DFL = \frac{\text{営業利益(EBIT)}}{\text{税引前利益(EBT: Earnings Before Taxes)}} DFL=EBITEBIT−支払利息DFL = \frac{\text{EBIT}}{\text{EBIT} – \text{支払利息}}

解釈

  • DFLが大きい(>1)場合

    • 負債比率が高いため、EBIT の変動が EPS に大きく影響する。
    • 利益が増加すると EPS の増加幅が大きくなる。
    • 逆に利益が減少すると EPS の減少幅も大きくなり、リスクが高まる。
  • DFLが小さい(≒1)場合

    • 負債が少なく、財務的なリスクは低いが、レバレッジ効果は限定的。

例題 営業利益 500万円、支払利息 100万円 の企業の場合、

DFL=500500−100=500400=1.25DFL = \frac{500}{500 – 100} = \frac{500}{400} = 1.25

この場合、EBITが10%増加すると、EPSは 10% × 1.25 = 12.5% 増加する。


3. 総合レバレッジ(Combined Leverage)

概要

営業レバレッジと財務レバレッジを掛け合わせた指標で、売上高の変動がEPS(株主利益)に与える影響を測定します。

総合レバレッジの計算式

DCL=DOL×DFLDCL = DOL \times DFL

また、以下の式でも表せます。

DCL=%EPSの変化率%売上高の変化率DCL = \frac{\% \text{EPSの変化率}}{\% \text{売上高の変化率}} DCL=限界利益EBT(税引前利益)DCL = \frac{\text{限界利益}}{\text{EBT(税引前利益)}}

解釈

  • DCLが大きい(>1)場合

    • 売上の変動が EPS に大きく影響する(高リスク・高リターン)。
    • 売上増加時の利益成長率は高いが、減少時の影響も大きい。
  • DCLが小さい(≒1)場合

    • 企業の利益変動は安定しており、財務的なリスクも低い。

例題 先ほどの例で DOL = 2.5、DFL = 1.25 の場合、

DCL=2.5×1.25=3.125DCL = 2.5 \times 1.25 = 3.125

この場合、売上が10%増加すると、EPSは 10% × 3.125 = 31.25% 増加する。


証券アナリスト試験での出題ポイント

  1. 計算問題

    • 各レバレッジの係数を求める問題(DOL, DFL, DCL)。
    • 売上・EBITの変化による利益への影響計算。
  2. 概念理解

    • 営業レバレッジと財務レバレッジの違いを問う問題。
    • レバレッジが企業のリスク・リターンに与える影響。
  3. 応用問題

    • 企業のコスト構造や負債構造を考慮して、最適なレバレッジ戦略を選ぶ問題。

まとめ

  • 営業レバレッジ(DOL):売上の変動が営業利益(EBIT)に与える影響を示す。
  • 財務レバレッジ(DFL):営業利益の変動がEPSに与える影響を示す。
  • 総合レバレッジ(DCL):売上の変動がEPSに与える影響を示す。

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